オンラインMMO『マビノギ』をモチーフとしたオリジナル小説【メインストリーム-Generation 0-】を中心に扱っております

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マビノギ-Generation 0- 第二章31 第五十話



          31


 間合いが狭まる。
 同時に前へでたライルとゼオードはほぼ同じタイミングでそれぞれに剣を振るった。

 剣撃音。
 瞬時にライルは重ね合わせた剣先を軽く振って揺さぶりをかける。
 ゼオードは剣をからめとられないように握りを強くしてこれを弾く。

 双方が一瞬だけ離れる。

 瞬間。

「氷結弾〈アイス・ボルト〉!」

 ライルが身を翻した隙間からリオンの氷結弾が放たれる。

「かァッ!」

 バックステップで受け止めるようにこれを切り払い、ゼオードは再び前へ。
 ライルは翻した身を遠心力として剣打。

 躱してゼオードは詠唱してあった魔法を解き放った。

「雷光弾〈ライトニング・ボルト〉!」

 狙いはリオン。
 だが。

「させっか――!」

 ライルが剣を雷光弾の軌道上に突き入れる。雷撃はライルの剣柄寸前までをほとばしり、その軌跡を大きくずらした。


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マビノギ-Generation 0- 第二章30 第四十九話



          30


「バカ野郎が」

 と、リオンはもう一度言った。その瞳は呆れと怒り、そして苛立ちを含んでいる。みれば、叩きつけられた彼の拳は薄赤く染まっていた。

「リオン……なんで、おまえ――」

 ライルが口にした瞬間、ものすごい力で頭をうえから押さえつけられる。リオンの手だ。そのすぐうえを雷撃が迸る。

「うおっ」

「余所見してんじゃねぇ。アホ面さらしてなにが『リオン』だ。気安く呼ぶな、バカ野郎」

 リオンはあくまで瞳を正面に、雷光弾を放ったゼオードへと向けたまま淡々と言ってのけた。
 自然、ゼオードの目がリオンを捉える。

「小僧。なんだ貴様は」

「ひとさまを小僧呼ばわりするんじゃねえ、白頭」

 しろあたま。
 一瞬ゼオードが眉をはねあげたのをライルは見逃さなかった。

「……ソレはオレの獲物だ。貴様などに用はない。失せろ小僧」

「コゾウっていうなっつってんだろ。そんなに呼びたきゃゾウの子供にでも呼んでやれ。……ああ、言葉が通じないほど耄碌して白い頭になったのか? そんなだからライルに負けるんだよこの間抜け」

「ッ――貴様ァ!」

 触発。
 ゼオードは両手を重ね合わせて素早く詠唱した雷光弾を放ちながら突っ込んでくる。

「リオンっ……!」


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マビノギ-Generation 0- 第二章29 第四十八話



          29


 風は次第に勢いを増してゆく。木立はせわしなく囁きあい、その音をアリアの耳に届けてゆく。それはあたかもアリアの焦りを代弁しているかのようだった。

「…………」

「…………」

 動けない。この状態となってからどれほどの時間が過ぎたのか。
 アリアの眼前に立つのはメルシェスだ。互いにショートソードを抜き、対峙していた。

 だが。

「メルシェス……」

「…………」

 異様だったのはメルシェスの剣が向く先だ。アリアに、ではなく、自身の喉へとあてられていた。まるで自殺を図ろうとするように。

 愛らしい黒のボブカットは数日の演習によってざんばらとしていた。そしてなにより――トレードマークともいえるメガネが、今の彼女にはなかった。

「お願いです、そこを退いてください」

「…………」

 メルシェスは答えない。普段は瓶底のように厚いメガネに覆われて隠れていた赤の双眸が、かつてみたこともないほどの力強さを備えている。
 アリアが一瞬足を前に差し出そうとして、

「……ッ!」

 踏みとどまる。
 みれば、メルシェスの首筋から細く、赤い糸――否、血が滴り流れたからだ。

 アリアは足に込めた力を抜かざるをえなかった。

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マビノギ-Generation 0- 第二章28 第四十七話



          28


 その少年は、じっと様子を窺っていた。
 茶色で少し癖のある髪を木陰にこすりつけて、じっと息を潜ませていた。凡庸な顔立ちは緊張感にこわばり、蒼白となっている。

「ねえ」

 その顔色が、凍りついた。
 肩を叩かれたからだ。
 だが、ぽんと置く程度のその手さえも少年には心臓をわしづかまれる思いだった。

「おどかすなよ……!」

 呼吸さえ苦しそうに、それだけを言う。すると肩を叩いた手のぬしは不機嫌そうに眉をつり下げた。

「いつまで偵察なんてやっているの。もう時間もグループもあんまりないよ」

 少女だ。少年と同じ、クラス〈Ⅱ〉の制服に身を包んだ、短髪で勝気そうな少女。互いの手首には同じ番号が刻まれた腕輪がはまっている。

 だが少年は自分のパートナーである少女をみても、なんら気持ちを落ち着かせることはなかった。

「はやく伏せろっ! 隠れて!」

 少年は少女の頭を地にたたきつける勢いで伏せさせる。文句と罵倒の言葉が聞こえたがこれも無視。

 少年が木陰から慎重に、顔をのぞかせる。
 木陰の先にはなにもない。木々が生えにくい地面状態なのか、やや開けた空間となっていたがそこにはなにもない。

「なにもないじゃないっ……」

「しっ……!」

 少女の非難の声をかすれ声でかぶせて黙殺。

 そして、ソレがみえた。

 少女にはソレが、はじめはちかりと光ってみえた。目の錯覚のような、陽光の反射のような、そんな刹那の察知。
 だが。

 ――キンッ。

「え……」

 ――キン、キン。

 と、軽い音が聞こえた。少女は食器をうち合わせたような音だと思った。
 ところが次の瞬間、少女の目にはっきりと発光がとらえられた。

 それは赤。
 燃え滾る火炎のような、赤。

 それは銀。
 照り返る湖面のような白銀。

 少女がそれをなにかと認識する暇も与えず、破砕音。地面が大きく陥没する。そのくぼみの中心点で、ふたりの男が剣をかみ合わせていた。

 少女はそのどちらにも見覚えがあった。

「ライル先輩と……ゼオード・グラシア……ッ?」

「しっ……しずかにしろって……バカ!」

 少年は慌てて少女の口をふさぐ。その手はがくがくと震えていた。

 ふたりの視線のさきで再び剣撃音。
 リズムなどはない。ひたすらに不規則で、どこまでも乱暴。だというのに時折水をうったように静かになる。

「わっ……やばい」

 再び衝撃。
 ふたりが隠れる木々のすぐ隣の植え込みが大きく抉られた。
 少女は半分パニック。少年のほうはそれをみて幾分か冷静さを取り戻したのか、少女の口をおさえたまま、ゆっくりとその場を離れる。

「あんなのに巻き込まれたら、本当に死んじまうよ……!」

 と、呟きを残して。


 横合いから忍び寄る影に気づかないまま――。


          †

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マビノギ-Generation 0- 第二章27 第四十六話



          27


 はたして、どれほど哀しみがこの街から生まれたのだろう。
 どれほどの嘆きが、あの空へ向かったのだろう。

 それは、ラングルの家に生まれた次男であるライルにとってもまた、例外ではなかった。

 そしてその日もまた一つ、彼の嘆きが空へと舞うこととなった。


「……え?」

「本日づけで、お暇をいただきたく……」

 目の前で恭しく頭を垂れるのは、祖父の代から仕えていた老年の執事だ。
 片眼鏡の奥、鈍色の瞳からは感情が一切読めない。塵一つないスーツと洗練された姿勢が一流の執事なのだと物語っている。ライルが物心ついたときから「爺」と呼んで慕っていた彼には、遊んでもらった記憶も数え切れない。

 その、彼が。
 彼までが、こう口にしたのだ。

「ま、まってよ……ねえ、なんで急にそんなこというの? お父さんがいなくなったから? お兄ちゃんが死んじゃったから? だいじょうぶだよ……ぼく、すぐ大きくなって家を建て直すよ。お母さんがいなくても、だいじょうぶだから。ばあちゃんだっているし……だから、だからさ――――」

「ライル坊ちゃん。イメンマハの惨劇によってラングル家が被った被害はあまりにもおおきいものです。旦那様、奥様……そして兄君であらせられるゲイル様も亡き今、各地で推し進めていた産業は中止せざるをえません。タルティーン地方にてすすめていた農林漁業、またバンホールの鉱業団体からもこれ以上の支援金停滞は計画の撤退を否めない、との報告があがってきております。ラングル家は……没落いたします。今、この家にあるものは全て借金の返済に充てられることでしょう。坊ちゃんがいま立っておられるこの絨毯も、そうです」

「やだよ……いかないでよ……ぼく――ううん、おれ、がんばるから。すぐもとに戻すから。穴の開いた壁も直すよ。崩れちゃった三階も、焼けちゃった庭だって! そうだ……爺たちの使用人部屋だってもっともっとおっきくするよ! だから……」

「……申し訳ございません、坊ちゃん。ですがわたくしを雇うようなお金すら、いまは惜しむべきなのです。……失礼いたします」

「まってよ……ねえッ……まってよぉぉぉぉおおおお!」


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