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マビノギ-Generation 0- 第二章30 第四十九話



          30


「バカ野郎が」

 と、リオンはもう一度言った。その瞳は呆れと怒り、そして苛立ちを含んでいる。みれば、叩きつけられた彼の拳は薄赤く染まっていた。

「リオン……なんで、おまえ――」

 ライルが口にした瞬間、ものすごい力で頭をうえから押さえつけられる。リオンの手だ。そのすぐうえを雷撃が迸る。

「うおっ」

「余所見してんじゃねぇ。アホ面さらしてなにが『リオン』だ。気安く呼ぶな、バカ野郎」

 リオンはあくまで瞳を正面に、雷光弾を放ったゼオードへと向けたまま淡々と言ってのけた。
 自然、ゼオードの目がリオンを捉える。

「小僧。なんだ貴様は」

「ひとさまを小僧呼ばわりするんじゃねえ、白頭」

 しろあたま。
 一瞬ゼオードが眉をはねあげたのをライルは見逃さなかった。

「……ソレはオレの獲物だ。貴様などに用はない。失せろ小僧」

「コゾウっていうなっつってんだろ。そんなに呼びたきゃゾウの子供にでも呼んでやれ。……ああ、言葉が通じないほど耄碌して白い頭になったのか? そんなだからライルに負けるんだよこの間抜け」

「ッ――貴様ァ!」

 触発。
 ゼオードは両手を重ね合わせて素早く詠唱した雷光弾を放ちながら突っ込んでくる。

「リオンっ……!」





 とっさに起き上がろうとしたライルはさらに頭を押さえつけられてその場にうずくまる。だが抗議の声をあげるよりはやく、

「氷結弾〈アイス・ボルト〉」

 リオンの指先にきらきらとした氷弾がいくつもできていた。氷結弾。数は五。その一つを摘むように指をたて、ゼオードへと――解き放つ。

「ふっ!」

 抜き手のままのゼオードはこれを横に躱す。ところがかわした先に既に次の氷弾が迫っており、

「なにっ……」

 とっさに手で払いのけてしまう。接触した氷弾はすぐに消失。しかし次の瞬間にはびきびきと氷の波が腕をかけのぼり、ゼオードの左腕肘関節までをがっちりと凍らせた。

「剣士が剣を捨ててなにをやっているんだ? 本当馬鹿ばっかりだな、この学校は」

「こ……の、小僧がァ――ッ!」

 視線はリオンに。氷をかきむしり、がむしゃらに腕を動かそうと躍起になるゼオード。
 その射殺されそうな鋭い眼光にもまるで動じることなくリオンは立ち上がる。そしてライルの胸倉を強引に掴み上げて立たせた。

「てめえも、いつまでぼけてやがる。さっさと立て。……つまらねえ口車に乗せられやがって」

「リオン……おまえもしかして……全部……」

「ああ。きいてた」

 リオンが言う。
 その親指が後方の木を指し示すよりもはやく、ライルはこれを理解する。

「マーキング……」

「普段のてめえなら俺の魔力の痕跡くらい絶対に見逃さなかったはずだ。頭に血のぼらせて、ろくに戦えもしないままやけくそか」

 胸倉を掴むリオンの手にどんどん力がこもってゆく。

「ふざけるなよ」

 眦にありえないほどの怒りが浮かんでいる。

「好き放題いれられやがって、挙句に敵のいうことを鵜呑みにしてすっかり抜け殻か。おめでたすぎるぞこの馬鹿が」

「リオン……だって、おれ……おれは」

「ッ……情けねえツラしてんじゃねえ! 俺が普段、てめえに一発いれるのにどれだけ苦労していると思ってやがる」

 怒鳴られる。すごい形相だった。
 その、視界がブレる。リオンの顔がまともにみえなくなる。
 目頭が熱かった。もう、本当に苦しくて苦しくて仕方がなかった心のつかえがするりと溶けていくようで。

「おまえは底抜けのお人好しだからな。あいつの言っていることが正しいのかもしれねえ。他人なんざ利用して利用されてくらいの関係のほうがもしかしたらすっきりしてんのかもな」

「…………リオン」

「でもな」

 リオンはそこで、ライルの胸元を解放。身体を入れ替えるようにゼオードのほうへと歩き始める。しかし、振り返るライルに背を向けていながらもはっきりとこういった。

「おまえにゃ、似合わねえよ」

 と。
 ――ジュッ。
 不意に、耳障りな音が届く。

「ガキがァ……」

 火焔弾。詠唱して解き放たないまま漂う火の塊にゼオードが凍った左腕を突っ込んだ音だ。解けたことを確認するように指を握り、腕を曲げてから鋭くリオンを睨みつけた。

「……小僧、貴様は邪魔だ。先に始末してやる」

「ゼオード・グラシア。てめぇもあんまりこの馬鹿に変なことを吹き込んでくれるな。コイツは生粋の大馬鹿者だからな、すぐ信じちまう」

「死ね――」

 陽炎のようにゆらめいたゼオードが一気に距離をつめた。リオンは氷結弾でこれを迎え撃つ。残りは三発。しかしリオンは動き、放ちながら次々と氷弾を詠唱してその数を切らさない。

 飛び交う氷の結晶をゼオードは避け、また自分の周囲に固定したままの火焔弾で相殺する。
 距離は詰まらない。リオンはほとんど全速力に近いスピードで後退。時に体躯をゼオードと入れ替えてこれを凌ぐ。

 ゼオードが舌打ちする。距離を詰められないように絶妙に狙いすまされた氷結弾は、わずかでもバランスを崩すとゼオードの両足を狙ってくるのだ。鬱陶しいことこのうえない、とばかりに渋面していた。

 木々の合間、茂みの植生を穿ち、二人が疾駆する。

 だが、次の瞬間ゼオードの動きが変わる。
 氷弾を相殺してなお燃え盛る火焔弾は消えることなく、絶えずゼオードの周囲を漂っていた。その為に陽光の届かない森の中ではこれ以上ないくらいに目立つ灯りだった。
 リオンもいつのまに、意識せずそれを目印としていた。

 だから。

「!」

 突然見失う。火焔弾が消えたのだ。当然ゼオードの姿も既にそこにはなく、

「シェアァッ!」

 横手から突風のごとく飛び込んできたゼオードに肩を掴まれ、リオンは腹に拳を叩き込まれる。

「がッ……!」

 すぐさま体勢を整え、腰のフルートショートソードを引き抜いて横に振るう。牽制だ。追撃を受けないための牽制だったが、ゼオードはそれをかいくぐって逆にリオンの顎につま先をヒットさせる。
 身体をしならせた伸び上がりの蹴り。バランスは悪く、威力も望めないが、リオンの意識を数瞬だけ寸断するには十分だった。

「トロいぞ小僧ッ! どうやら剣の腕はまだまだらしいな、女よりもすっとろいぞォッ!」

「野郎……っ」

 ストックしておいた氷結弾が掻き消える。リオンが意識を途切らせた為である。
 ゼオードはなおもリオンに迫ろうと四肢をたわませる。

 だが。

「雷光弾〈ライトニング・ボルト〉!」

 迫った雷撃に機先を制される形でのけぞって距離をとった。

「……もう、動けンのかよ」

 息を吐いて拳で頬を撫でるリオン。

「なんとか。悪りィな」

 ライルは肩をすくめてみせ、とりあえず動ける程度まで回復したことを示した。

「ゼオード!」

 そして相手の名前を呼ぶと同時にソレを放る。

「…………?」

 ゼオードは自分の手元に投げられたソレを見て息を呑んだ。彼らしからぬ驚きの表情だった。
 しかし。

「なんのつもりだ――」

 と、ゼオードが問うよりもはやく、

「なんのつもりだてめェはッ!」

 リオンが怒鳴っていた。それはもう、ものすごい声量で。
 なぜなら、ライルが投げたのはグラディウスであり、もともとゼオードが武器としてつかっていたものである。

「いや、だってこのまま二対一ってなんか卑怯だろ」

 そういってライルは先ほど飛ばされた自分の剣の刺さったままだった木に歩み寄り、これを引き抜いてみせた。

「沸いてンのかっ? 卑怯だなんだってこんな腕輪つけられている俺たちにいえた義理か!」

「んー……でもなぁ。一応ほら、おれはお前に助けられたわけだしさ。その時点で反則な気ぃするし、正々堂々っていうか筋通したいっていうか……ま、そんな感じで」

「…………見捨てていいか、おい」

 仰々しく顔をひきつらせるリオンにライルは笑ってみせる。

「そんな気ないくせに」

 ふい、と視線をそらされた。

「……貸しだ。ようやく『らしく』なってきたてめえに免じてな」

「……サンキュ」

 それだけいって、ライルも視線を前に。
 ゼオードは動いていない。ただ憎々しげに――いや、わずかに戸惑いの色を浮かべて、二人をみつめていた。

「アリアが心配だ。悪いけど今はかなりあてにしているぜリオン」

「正直マナが残り少ない。こんなハンデつきじゃ俺とお前でも奴に勝てるかは微妙なところだ。だから焦るな。焦れたら剣が鈍るぞ。アリアなら心配いらねえ」

 リオンはそこで言葉を切って、

「俺の『姫』が向かっている」


 彼にしては珍しく、冗談めかして口の端を持ち上げた。




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更新おつかれさまです、早速読みました。
リオンくんがカッコ良すぎて鼻血が…鼻血が…!orz
次回はカトレアさんが活躍するのでしょうか。この二人のコンビ大好きなので、とても楽しみです。それでは。
K. | URL | 2012/07/24/Tue 14:11 [編集]
Re: タイトルなし
引き続きのコメントありがとうございます。

なにぶんこの作品自体が古いものでして、ブログ掲載にあたり読み直しているともう全てを書き直してしまいたいくらい恥ずかしいのですが、鼻血なほどお喜びいただけるとは嬉しいやら赤面やら少々複雑な気持ちです……(笑

とうに完結しているのですからさっさと載せてしまえばいいのでしょうが……少々思うところもありまして、現在更新中の第二章が終了次第、全体のボリュームやその辺りについても触れたいと思っています。
はにかみ童子 | URL | 2012/07/28/Sat 23:30 [編集]
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