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マビノギ-Generation 0- 第二章31 第五十話



          31


 間合いが狭まる。
 同時に前へでたライルとゼオードはほぼ同じタイミングでそれぞれに剣を振るった。

 剣撃音。
 瞬時にライルは重ね合わせた剣先を軽く振って揺さぶりをかける。
 ゼオードは剣をからめとられないように握りを強くしてこれを弾く。

 双方が一瞬だけ離れる。

 瞬間。

「氷結弾〈アイス・ボルト〉!」

 ライルが身を翻した隙間からリオンの氷結弾が放たれる。

「かァッ!」

 バックステップで受け止めるようにこれを切り払い、ゼオードは再び前へ。
 ライルは翻した身を遠心力として剣打。

 躱してゼオードは詠唱してあった魔法を解き放った。

「雷光弾〈ライトニング・ボルト〉!」

 狙いはリオン。
 だが。

「させっか――!」

 ライルが剣を雷光弾の軌道上に突き入れる。雷撃はライルの剣柄寸前までをほとばしり、その軌跡を大きくずらした。




 すぐさまリオンが氷結弾を三点射。

 ゼオードはグラディウスの剣腹で二発までを弾いて、三発目は跳躍して躱す――否。

「なにっ……」

 ゼオードは巨木の木枝を掴んだと思えば重力を感じさせない身のこなしで枝の上にたちあがり、そのまま木と木の間を素早く移動する。
 すでに距離を詰めていたライルは頭上で展開するそれを目で追うのがやっとだ。

「リオンッ!」

 わずかにゼオードの姿を見失ったとき、ライルは瞬間的に叫んでいた。

「ッ!」

 ゼオードの斬撃がリオンの肩を大きく抉った。

「てめえっ!」

 ライルが剣を振るうよりもはやく再びゼオードは跳躍。木から木へと音も立てずに移動してゆく。

「リオン、大丈夫か……?」

 懸命に目でゼオードの動きを追いながら声をかける。ちらりと視線をリオンに向けると、左肩をおさえたリオンは「ああ」とだけ短くいってすぐに魔法を詠唱しだした。

 どうやら見た目ほどには大きな傷ではないらしい。或いは寸前で叫んだことが功を奏したのか。

 衝撃音。

 ゼオードの攻撃だ。とっさに避けたライルとリオンの間に斬撃を残して、すぐさま木の上へ。

「……猿だな、まるで」

 リオンが毒づいた。

「つうかこれじゃどうしようもねえぞ。狙い撃てないのかリオン」

 せわしなく視線を動かしていうものの、リオンの表情は芳しくない。

「無茶いってンな。おまえはともかく俺じゃ目で追うのすら精一杯だ。とてもじゃないが捉えきれねえ――」

「きたぞっ!」

 リオンを突き飛ばしつつ反対側へ地を蹴る。その隙間を縫ってゼオードが降り立つ。

「雷光弾〈ライトニング・ボルト〉!」

 ライルの指先から雷撃が迸った。
 しかし僅かに遅れた詠唱からか、捉えきることはできない。ゼオードは悠々と回避して再び頭上へ消えてゆく。

「……消耗させる気だな、単純だがこっちにハンデがある以上有効だ」

「くそ……きたねえな、あいつは。おい、どうするよ?」

 ふむ、と頷いてリオンは視線をライルに向けると、

「お前もいけ」

 といった。

「はあ? ムリに決まってンだろ!」

「お前ならできるだろ。はやくいけ」

「そっちこそ無茶いってんじゃねえよっ。いまは『アレ』を使えねえんだよ。わかってるだろ!」

 ハンデがあるんだぞ、と腕輪をみせると、リオンはいよいよ顰め面を濃くした。

「……誰もあれに張り合ってこいとはいってねえだろ。猿が二匹になったところでなんの解決にもならん。下手すりゃ落とされるぞ」

「じゃあ……あ、そういうことか」

 ライルが頷き返す。
 そこへゼオードの攻撃。かわしたリオンがライルに背を向ける。ライルもそれにならってふたりは背中合わせになる。

 攻撃をかわされたゼオードはさらに木の上へ。

「1」

 とリオン。

「2」

 ライルが言う。

「「3」」

 そこへゼオードの攻撃。これをふたりは離れてかわす。すぐさま背中合わせに戻り、

「1」

「2」

「3……いけっ」

 掌を上向きに重ねたリオンが叫ぶ。

「おうっ」

 それを踏み台にライルが右足を置いて、力を込める。リオンが背後へ放るように腕を振った。

 飛翔。

 人力でジャンプ台をこなして中空へ躍り出たライルに迫る影。

「――なに……!」

 そこへゼオードが飛び込んでくる。予想外だったのだろう、空中大衝突をおこす。頭から突っ込んできたゼオードを受け止める。

「ぐッ……!」

 だがライルにとっても予想以上の衝撃だった。圧迫された腹部で息がつまる。速さは強さ。どうやらゼオードは想像を上回るスピードで移動していたらしい。とてもではないが反撃まではできそうもなかった。

 ゼオードはライルをそのまま押しのけようとして――。

「こっちへ落とせ!」

 リオンの叫びに反応してしまう。

「よっしゃ……ッ!」

 そこをライルは逃さない。
 身体を組み替えて膝を丸め、力を込めた踵で思い切りゼオードを踏み落とす。

 バランスを崩したゼオードはなんとか着地しようと体勢を整える。
 いや、整えようとして、

「くらえ――」

 それを見る。

 豪火。
 何度も詠唱を重ねて赤々と燃え滾った火炎がリオンの掌に集まっていた。

「火焔弾〈ファイア・ボルト〉!」

「――――ッ!」

 轟音。

 とっさに耳をふさいだライルの眼前で。
 巨大な火焔弾は見事な衝撃音をたててゼオードのどてッ腹に炸裂した。

 煙と爆風で木々が大きくたなびく。
 着地したライルはリオンの近くに歩み寄ってもうもうと空中に立ち上る煙に目をやった。

「やった、のか?」

「さあな。だが間違いなく入ったはずだ。この俺が残りのマナをほとんど使い切って撃ったんだ、たとえどんな手をつかっても無事なはずはねえ」

 火焔弾は本来あんな爆裂を起こすような魔法ではない。扱い手によって多少の違いはあれど、あくまで火炎だ。炸薬の類は魔法構成に含まれていない。にも関わらずあんな爆裂を引き起こすということはゼオードがなんらかの手段で相殺を試みた結果だろう。

 リオンもそのことに気付いている。
 やがて煙は億劫そうにのったりとその幕を広げた。

「……いない?」

「いや、みろリオン」

 ライルが視線で促した先。

 爆発地点とは大きく離れた茂みから、人影が立ち上がった。
 しかしその姿をみてライルもリオンも思わず息を呑んでしまう。

 左半身。肩から太腿にかけての肌が火傷でしなびて歪な模様を形度っていた。それは、強引に相殺しようとした結果なのか。

 通常の火焔弾ではどんなに威力があろうとも引き出せないほど醜く爛れている。焼き千切れたシャツは右腕にはりつく程度を残して上半身はほとんど裸同然だ。しなやかだった銀髪も爆発の影響かひどくくすんで乱れていた。

 それはつまり、無事ですむはずがないというリオンの言葉が正しかったことの証明だった。しかしここまでするつもりがなかったというのも本音だろう。

 自分のやったこととはいえ、とっさに言葉をだせないリオン自身がそれを物語っている。

 ライルが思わず駆け寄ろうとする。あの傷ではもう戦うことなどできるはずがないから。
 しかし。

「――――…………」

 声が、届く。
 ライルの耳に声が届く。

 低く、重くしゃがれた声が届く。
 それはそう、まるで――。

「リオンっ……!」

 叫ぶ。が、まにあわない。ライルがリオンに駆け寄るよりもはやく、

「な――」

「……つけたな」

 その声が。
 手が。
 リオンの顔面を掴みあげていた。

「傷を、つけたな」

「こっちだ、ゼオードッ!」

 ライルが飛び込む。だらりと左腕に剣をさげたまま、ゼオードはリオンを掴みあげた右腕を、彼の身体ごと振るう。

「……づッ!」

「がっ!」

 ふたりの身体が重なり合うように衝突し、地に転がる。

「オレの……からだに……ッ傷をつけたな」

 ゼオードの手が伸びた。狙いはリオンだ。

「よくも、オレの……からだに――傷をォッ!」

 激昂。それはライルすらもみたことがないほどのゼオードの激しい咆哮だ。リオンが再び肩を掴まれ、激しく木にたたきつけられるのを、一瞬みつめることしかできないほどに。

「がッ――」

 衝撃にリオンが崩れ落ちた。

 だが。
 それを見過ごすはめになってしまったというのに、ライルはなぜか別のことを考えていた。

 そしてゼオードを――いや、その瞳に宿る色をみて、確信する。

「……それが、てめえの守るものってわけかよ」

 立ち上がり、言葉を紡ぐ。
 ゼオードはリオンから手を放してライルをみた。

「あ……?」

「それがてめえの、守るものなんだろ。理由はわかんねえ。でも、そんだけ怒るってことはつまりそういうことだ。ゼオード、お前にとっては自分の身体が何より大事ってわけだ」

「守るもの、だと……?」

 風が押し寄せる。ゼオードの髪を撫で、強く憎悪のこもった瞳を曝す。

「笑わせるな。オレに守るものなどない。貴様らのような人情だなんだと反吐のでるような感情に身を任せている雑魚と一緒にするな」

「ごまかすなよ。いまはおれたちのことは関係ない。おまえの話だ、ゼオード。おまえはどういうわけだか自分の身体が傷つくことに――ひどく怯えてやがる。怒っているンじゃねえ。まるで、それが罪だとでもいわんばかりに……びびってるんだろ」

「く……くっく」

「…………?」

「くっくくく。くだらん。くだらんなライル・ラングル。貴様とはもう言葉を交わすのも鬱陶しいッ!」

 地を蹴って言葉半ばにグラディウスを振りかざし唐竹割りを放つぜオード。

 剣が重なり合う。ライルは動じない。それどころかはっきりと目を見開いてこれを受け止めた。
 だがゼオードの猛攻は止まらない。

「てめえが自覚してンのかっ……してねえのか……それはわかんねえけどよっ」

 一撃。一撃。それらを捌きながらも視線はあくまでまっすぐに。ゼオードの瞳に。

「やっと一つわかった気がするぜっ。てめえが……なんでそこまで戦いに――強さにこだわるかっ。てめえにも、あるんだな? 守るものが……守りてえものがあったから……そこに信念があったから! そこまで強さに拘ってっ……強くなったんだろうが!」

「だまれぇぇぇぇえぇえええええええッ!」

 間違いない。
 ゼオードは何かに心を囚われている。動揺しているのがわかる。
 あれだけ苛烈で変幻自在だった鋭利な剣筋が、今でははっきりとみてとれるほどに。

「守るモノだと? 笑わせるな、そんなものは弱者の戯言に過ぎんッ。人間は――守るものが……そんなものがあれば弱くなり、死ぬだけだッ! 仲間だなんだと、そんな弱点を後生大事に抱えている貴様と一緒にするなっ。虫唾が走るわァッ!」

「ッ……そうじゃねえ、そうじゃねえだろっ。人は、守るものが、守りたいと思うものがあるから強くなれるんだろうが! 強くなりたいと願って――それが信念に変わるんだろうが!」

「それが戯言だ。ならば今の貴様のどこに強さがある? 先ほどまでその守りたい『仲間』とやらの為に力を出し切った結果を忘れたとはいわさんぞっ」

 ゼオードが迫る。

「ったく、うじうじと揚げ足とりやがって……この、バカヤロウがァ――――ッ!」

 その振り下ろしを左に躱す。半身で最小限の動き。ライルはぎりぎりにそれた相手の剣筋の軌道に自身の剣を重ね――巻き取るように、自らの剣ごと力いっぱいに放りなげた。

「ライル・ラングル……ッ」

「ゼオード・グラシア――――ッ!」

 互いに素手となる。だが茂みの奥に消えていった二振りのグラディウスに気をとられたゼオードの反応は鈍い。

 ライルは身体をしならせ、弓のように引き絞り、一直線に腕を振りぬく。
 まっすぐ。どこまでもまっすぐなその一撃はゼオードの頬に吸い込まれるように。

 これ以上ないくらいに強烈な一撃をたたきこんだ。




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楽しんでいた時期が違いますが
素晴らしい作品です
私の中の名作の一つになりました
心から楽しませてもらい
ありがとうございます
マビノギゆとり世代 | URL | 2015/02/19/Thu 16:28 [編集]
Re: タイトルなし
まさか数年経った今、新たに感想をいただけるとは……!
暖かいコメントをありがとうございます。

すべて私、童子の至らなさが原因ではあるのですが、近日中に何らかのご報告ができればと思います。
本当にありがとうございました。
はにかみ童子 | URL | 2015/02/25/Wed 00:54 [編集]
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| | 2015/02/28/Sat 09:33 [編集]
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